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図書館で借りた本の読書記録です 基本的にミステリ好き


by MameBean
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ルピナス探偵団の当惑

ルピナス探偵団の当惑 (ミステリー・リーグ)
(津原 泰水 / / 原書房)

* * * * * * * *

吾魚(あうお)彩子はルピナス学園に通う女子高生。
密室事件の謎を解いた事がきっかけで、刑事をしている姉から事件に関する推理を持ち込まれる。
「冷えたピザはいかが」「ようこそ雪の館へ」「大女優の右手」3作の連作短編集。

■犯人が冷えたピザを食べた理由は?
■被害者がダイイングメッセージにルビをふった理由は?
■死亡した舞台女優の右手が持ち去られた理由は?

謎解きの中心は「誰が」殺したのか、ではなくて「なぜ」こういうことをしたのか。それを突き詰めた先に犯人が浮かび上がってくるもので、ラストにはちょっと切なさを含んでいて血なまぐさいものじゃないのがいい。そもそも最初の2編は、10年ほど前に「津原やすみ」名義で講談社X文庫から出版されたものを全面改稿したもので、元はティーン向けだったそう。


キリエと摩耶と彩子の女子高生3人組のテンポのいい会話に、化石オタクの祀島くんと彩子の姉の不二子が加わり話がどんどん進んでいくのが面白い。会話のかけあい、事件に巻き込まれていくところが前にやってたドラマの4姉妹探偵団に近い雰囲気ですね。
でも時効警察ほどキャラはたっていない感じ。というのも、主人公である彩子の存在感が薄いからです。いくつか事件を解決した経験を持つとのことで、刑事である姉に事件を押しつけらていますが、特別な知識を持ち合わせているわけではなく、発想の柔軟さはキリエの方があるし洞察力の鋭さと知識は祀島くんの方がある。しかし、事件の真相にたどり着くのは彩子なんですね。ほかの登場人物が個性的ありすぎて、事件を解決するまでは彩子は主人公でありながら目立たない存在になっています。
3話目の「大女優の右手」においては事件の解決をも祀島くんにバトンタッチし、記述者の立場になってしまっています。
でも一番面白かったのはその「大女優の右手」なんですねー。大胆な遺体の移動トリックと人間の盲点をうまくついた作品で、しかもラストには切ない余韻を含んでいます。
by MameBean | 2008-05-16 03:33 | 借りた本─ミステリ