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図書館で借りた本の読書記録です 基本的にミステリ好き


by MameBean
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女王国の城

女王国の城 (創元クライム・クラブ)
(有栖川 有栖 / / 東京創元社)

* * * * * * * *

新興宗教・人類協会の聖地・神倉に行ったまま連絡の取れない江神部長を案じて、アリスら推理小説研究会のメンバーが神倉に向かう。江神さんの安否は確認したものの、不穏な空気を感じた4人はしばらく神倉に留まることにする。
そんななか思いがけず殺人事件に遭遇する‥‥。
学生アリス・シリーズ 第4作。

前作『双頭の悪魔』から15年7ヶ月ぶりの続編。でも前作「双頭の悪魔」から半年と言う設定なので、バブルまっただ中、という時代背景です。読む進めていくうちにその辺のことを忘れてしまうから、アリスの「インターネットって何だ?」みたいな発言にびっくりさせられます。ネット環境もないし、携帯電話もないということです。


宗教っぽさがなく、一見フレンドリーで開かれた感じのする人類協会。
事件が起こり、徐々にあらわになる彼らの頑な態度に、EMCのメンバーのみならず、私までムカムカ。
人類協会というのが、宇宙からの使者“ペリパリ”の降臨を待つという団体なので、UFOやSFの話題が多く、EMCの4人を〈城〉に軟禁する人類協会が、必然的に地球を乗っ取りにきた宇宙人に思えてきます。だってそれぐらいこちらの要求が聞き入れられないんだから。殺人が起きているのに、警察への通報するな、さらには〈城〉から出るな、だなんて。元警官の椿さんが怒髪天を衝くのももっともです。

〈城〉から脱出した時には、してやったり!って思いましたよ。これがなかなかスリリングで、前作のマリア奪還の時よりもはらはらしました。〈城〉から出れても、街には人類協会の息がかかっていますからね。この辺SFっぽくて、会話に出てきた『不思議なマチ』もののSFが読んでみたくなります(おそ松くんなんて意外なラインナップも)。

まぁ、人類協会が警察に連絡せず街も城も封鎖したから、私の好きなクローズド・サークルになったわけでもありますが。11年前の事件で使われた拳銃、消えたビデオテープの謎‥‥
密室らしい密室、トリックらしいトリックではないけど、人間の心理を突いた華麗なマジックのようでした。〈読者への挑戦〉を前に、何とか犯人を推理しようと思うんですけど、あー前に何か気になるところがあったような‥‥と思ってもこれだけのページ数から探すのが難しく、考えをまとめる間もなく解答編を迎えてしまいました。城の見取り図よりも時間ごとのアリバイ表がほしかった‥‥!自分でメモっておけって話ですが。
人類協会の背景にあった事情も判明して、どうやら彼らは邪悪な宇宙人ではないようです。


 ふう、と溜め息をついて、足許に視線を落とすと——
 小さな星のように、キラリと何かが瞬いた。
 拾い上げて、掌にのせる。
 イヤリングだ。

有栖川氏の書く文章には、何か詩的な雰囲気がします。学生アリスシリーズは特に情感たっぷりな描写が多くて好きだなー。
by MameBean | 2007-12-05 18:48 | 借りた本─ミステリ