図書館で借りた本の読書記録です 基本的にミステリ好き


by MameBean
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もっとすごい! このミステリーがすごい!
(別冊宝島)

(宝島社)

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毎年発表される「このミステリーがすごい」でランクインした作品を、国内外合わせて150人の投票によりランキング。言わばこの20年でのミステリ・ベスト10。

1位の作品は未読ですが、なるほどーといった国民的作家とも言うべき人の本。しかし面白いのが、必ずしもその年のこのミスで1位をとった本だけがランクインしているわけじゃないこと。2位をとった本は89年のランキングで8位だったものです。
海外版にはウォッチメイカーの作者ジェフェリー・ディーヴァーの本がいくつか入っています。ディーヴァーって映画化されている「ボーン・コレクター」を書いた人だったんですね。知らなかったなー。

最初のページに「ランキングにはこだわらず、自分に合った1冊を見つけて」と書いてあります。確かにこれだけたくさん国内外のミステリが載っているので、自分のフィーリングにあったものを探すのには便利ですね。
さっそくこれを見つつ図書館で予約する本を検討したいと思います。
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by MameBean | 2008-07-01 19:53 |     ─小説・エッセイ

ウォッチメイカー

ウォッチメイカー
(ジェフリー・ディーヴァー / / 文藝春秋)

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恐ろしい手口で次々に人を殺しては、 犯行現場に時計を残していく犯人『ウォッチメイカー』にリンカーン・ ライムとアメリア・サックスが挑む。
このミステリーがすごい2008 海外版 第1位

四肢麻痺の天才捜査官リンカーン・ライムが、車椅子から無線で捜査の指揮をとって犯人を捕まえる「リンカーン・ライム」というシリーズの第7弾。
9.11の同時多発テロで四肢麻痺になった、天才科学捜査官リンカーン・ライム。そしてライムの手となり足となり捜査を手伝うのが女性捜査官のサックス。現場に残された微細な証拠物件から徐々に犯人に近づいていきます。

港のふちに掴まらせて手首を切るとか、首の上に巨大なパイプをのせるとか、拷問のような方法で人を殺し、そして現場には必ず時計を残す殺人犯・ウォッチメイカー。殺害目的はあるのか、それは一体何なのか。
上下2段組で500ページ超という長編ですが、2つの事件の捜査が進み、次々に真相が判明していくので、長く感じることも中だるみすることもありません。特に終盤からの二転三転する展開は息つく暇もありませんでした。いろいろなレビューを見ると、どうやらこのどんでん返しがリンカーン・ライムシリーズの醍醐味のようです。
そして分かるウォッチメイカーの動機。最初と最後でその人物像は全く違うものになっています。

シリーズ物なので、初めて読む私にはレギュラー陣のキャラクタのイメージが掴みにくく、サックスやライムの葛藤だったり悩みに感情移入しづらい部分もありました。
そのせいか、今回初登場というキャサリン・ダンスという人物が特に印象的にうつりました。
彼女はわずかなしぐさや目の動きなどで相手の心理を読み取る、身体言語分析(キネシクス)という分野の専門家で、目撃者や共犯者から有益な情報を聞き出して事件の進捗に貢献します。相手の性格のタイプをすぐさま捉えて、その相手ごとに適切なキャラクタを演じ分けているところなんか女優のよう。時には相手が嘘をついていると分かっていても気づかないふりをする優しさも。スピンオフ作品というか、彼女を主役にした作品が出来上がっているそうですね。日本語訳が出版されたらぜひ読んでみたいです。
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by MameBean | 2008-06-04 18:49 | 借りた本─ミステリ

禁断のパンダ

禁断のパンダ
(拓未 司 / / 宝島社)

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“ビストロ・コウタ”のオーナーシェフである幸太は、レストランの料理目当てに妻の友人の結婚式に出席し、その席でレストランのオーナーである中島と知り合う。結婚式の翌日、レストランのすぐ近くで会社員の死体が見つかる‥‥。
第6回 このミステリーがすごい! 大賞受賞

まずフレンチレストラン“キュイジーヌ・ド・デュウ”での結婚披露宴の垂涎ものの料理の描写にガツーンとやられます。美味しんぼのような美食談義が繰り広げられるけれどそこには嫌みはなく、文字だけなのに料理の味はおろか香りさえも漂ってくる気がします。プロフィールによると著者自身シェフの経験があるようで、このリアルな描写も納得です。

その披露宴から時を経ずして起こるのが、運輸会社の部長殺害事件。早い段階からレストランと運輸会社との関連性が分かるため、運輸会社に隠された秘密もおぼろげに予想がつきます。
‥‥が、真相は私の想像を絶するものでした。そしてラスト1ページの展開は読み手にずっと消えない強烈な後味を残します。最後まで読み終わってから冒頭の“キュイジーヌ・ド・デュウ”での晩餐シーンを読むと、その印象は180度変わってしまいます。
このミス大賞受賞していますが、これといってトリックがあるわけではなく、犯人も意外ではないのでミステリ色は弱いです。最終選考ではほぼ満場一致で大賞が決まったそうですが、選評で「『このグルメ小説がすごい』大賞だったら文句はない」と書かれていたのもうなずけます。
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by MameBean | 2008-05-20 19:54 | 借りた本─ミステリ

ルピナス探偵団の当惑

ルピナス探偵団の当惑 (ミステリー・リーグ)
(津原 泰水 / / 原書房)

* * * * * * * *

吾魚(あうお)彩子はルピナス学園に通う女子高生。
密室事件の謎を解いた事がきっかけで、刑事をしている姉から事件に関する推理を持ち込まれる。
「冷えたピザはいかが」「ようこそ雪の館へ」「大女優の右手」3作の連作短編集。

■犯人が冷えたピザを食べた理由は?
■被害者がダイイングメッセージにルビをふった理由は?
■死亡した舞台女優の右手が持ち去られた理由は?

謎解きの中心は「誰が」殺したのか、ではなくて「なぜ」こういうことをしたのか。それを突き詰めた先に犯人が浮かび上がってくるもので、ラストにはちょっと切なさを含んでいて血なまぐさいものじゃないのがいい。そもそも最初の2編は、10年ほど前に「津原やすみ」名義で講談社X文庫から出版されたものを全面改稿したもので、元はティーン向けだったそう。


キリエと摩耶と彩子の女子高生3人組のテンポのいい会話に、化石オタクの祀島くんと彩子の姉の不二子が加わり話がどんどん進んでいくのが面白い。会話のかけあい、事件に巻き込まれていくところが前にやってたドラマの4姉妹探偵団に近い雰囲気ですね。
でも時効警察ほどキャラはたっていない感じ。というのも、主人公である彩子の存在感が薄いからです。いくつか事件を解決した経験を持つとのことで、刑事である姉に事件を押しつけらていますが、特別な知識を持ち合わせているわけではなく、発想の柔軟さはキリエの方があるし洞察力の鋭さと知識は祀島くんの方がある。しかし、事件の真相にたどり着くのは彩子なんですね。ほかの登場人物が個性的ありすぎて、事件を解決するまでは彩子は主人公でありながら目立たない存在になっています。
3話目の「大女優の右手」においては事件の解決をも祀島くんにバトンタッチし、記述者の立場になってしまっています。
でも一番面白かったのはその「大女優の右手」なんですねー。大胆な遺体の移動トリックと人間の盲点をうまくついた作品で、しかもラストには切ない余韻を含んでいます。
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by MameBean | 2008-05-16 03:33 | 借りた本─ミステリ

首無の如き祟るもの

首無の如き祟るもの
(三津田 信三 / / 原書房)

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奥多摩にある媛首村(ひめがみむら)の名家・秘守(ひかみ)家。
秘守家で代々続く通過儀礼・十三夜参りの最中に、当主一族の双子の娘が遺体で発見された‥‥。

昭和という時代のせいか『不在証明(アリバイ)』とか『莫迦(ばか)』などといった独特な硬質な言い回しにクセがあります。秘守家での複雑な跡取り問題とか、登場人物も多いため、状況を把握するまでちょっと手こずりました。

淡首(あおくび)様の祟りを恐れている名家。首にまつわる祟りの話の他にも、村の地名にも『首』が用いられていたりと『首』というキーワードがやたらと出てくきます。
そんな秘守家で起きた、三つの首無し事件。

この秘守家の当主一家が、確実に何か隠していそうなんです。死体を誰の目にも触れさせず火葬したり、不穏な言動をとったり。
十三夜参りでのひめこ殺害に関してはおぼろげに予想できたのですが、その後の二重三重の展開、そして解決編に入ってからのあの展開までは到底思いつくものではありませんでした。
作者による『幕間』が交互に差し込まれるんですが、説明的過ぎるしリズムが変わるので読みにくいな〜って終盤まで思ってました。でも最後にはこれがよく練られた上でのものだったことが分かります。
ミステリにおける首無しの分類をやるあたり、天晴です。

しかしこれ、シリーズものなんですね。全く知らずに読んだので、刀城言耶なる、途中にちらっと出てきただけの人がいきなりやって来て、すっぱり真相を看破したのにはびっくり。なかなか面白そうなキャラクタなんだけど、いかんせん描写が少ないのが残念。先輩の方がインパクトありすぎです。

このミスでランクインしているし、本格ミステリ大賞の候補作にもなっているし、大変評判がいいのですが、私はイマイチ合わなかった、というのが率直な感想です。土着的なところとかホラーちっくなところとか嫌いじゃないんですけどね。物足りない気が‥‥。横溝っぽいという評判を聞いていたのでイメージが出来上がり過ぎていたのかもしれません。

途中から「江川蘭子」なる人物が登場しますが、江戸川乱歩・横溝正史・甲賀三郎・大下宇陀児・夢野久作・森下雨村の6人が執筆した合作探偵小説のタイトルが「江川蘭子」なんだそう。しかも命名したのは乱歩だとか。本作もきっとミステリマニアの方が読めばいろいろとオマージュな部分があるって楽しめるんでしょうねー。
う〜ん、「江川蘭子」読んでみたい。
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by MameBean | 2008-04-10 19:48 | 借りた本─ミステリ

サクリファイス

サクリファイス
(近藤 史恵 / / 新潮社)

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自転車のロードレースのチーム・オッジに所属する白石誓(ちかう)。チームのエースを勝たせるために働く「アシスト」が彼の役割。初めての海外遠征で、誓は思いも寄らない悲劇に遭遇する‥‥。

昨年末の数々のミステリランキングでランクインしていた本作。
「ツール・ド・フランス」という言葉は聞いたことがありますが、自転車のロードレースって馴染みのない世界でした。でも『風が強く吹いている』の時もそうだったけど、知らないスポーツの世界を知るのは面白い。駅伝に引き続き、自転車のロードレースも見てみたくなりました。ほとんどテレビで中継しないのが悔しいところです。

思ったよりもさくさく読めてしまうから文章のボリューム的には少ないんだと思う。でもその少ない中でロードレースの仕組みやヨーロッパチームとの関係などがうまくまとめられていて、ロードレースの魅力が余す所なく伝わってきます。

ロードレースはひとりで戦うのではなく、チーム全体で作戦を立て勝利を掴むスポーツ。チェスや将棋と言った、頭脳的な判断が必要とされるゲームに似ている印象を受けました。
主人公の誓の役割は自分の成績を捨てて、チームの優勝のために働くこと。エースの前を走って空気抵抗を少なくしたり、エースの自転車がパンクしたら自分のタイヤを差し出したり、他チームの選手のペースを乱すための走りをする。ここまで他人のために働くスポーツって他にあるんだろうか。

そんな誓が偶然のチャンスで勝利したことで、戸惑いながらもエースとして活躍する夢を感じ始める。そして知ることになる、チームのエース・石尾の暗い噂。
爽快だった前半に比べて、後半からは渦巻いた疑惑がどんどん濃さを増していきます。そして起こった大惨事。事件が二転三転し、意外な真相が分かります。そして真相を知った後も、誓はアシストとしての役割を果たし続けることができるのか、競技を続けることができるのか。私はそれがいちばんの見所だと思います。

事件が起こってからの展開が早く、読み手が置いてけぼりな感じもありますが、サクリファイスの本当の意味が分かるラストには心を揺さぶられました。

 石尾さんが振り返って、僕を見た。
 小さな声で、だがはっきりと言う。
 白石、食らいついてこい。
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by MameBean | 2008-03-05 04:03 | 借りた本─ミステリ

吉原手引草

吉原手引草
(松井 今朝子 / / 幻冬舎)

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吉原で人気絶頂の花魁『葛城』が忽然と姿を消した。
第137回直木賞 受賞作


ある男が葛城について関係者に訪ね回っている体裁で話が進みます。
葛城とは何者なのか?葛城の関わった出来事とは何なのか?葛城についていろいろと聞き回っているこの男は何者なのか?
終盤まで一向にそれらが見えてきませんが、吉原には様々な職業の人が働いていて、その人たちが語る吉原のシステムやしきたりなどの話を聞いていると実際に吉原に足を踏み入れているような気分になります。吉原には吉原なりの決まり事があって、何も知らない者がひょいと花魁と一夜をともにできるのではない。手順を踏んでやっと言葉を交わすことができ、さらに馴染み客になるにはお金も時間もかかるらしい。はー、殿方も大変ですなー。
花魁が使うアリンス訛と言われる『…ありんす』『…おざんす』などといった独特の廓言葉とかもいいですねー。思わず日常で使ってみたくなりますが、この言葉には地方から吉原にやって来た子のお国訛りを隠す意味もあることを知るとちょっと複雑です。
すべて話し言葉で書かれているので、人によって職業によって異なる語り口調が当時の気配を感じさせてくれます。

吉原には出入り口はひとつしかなく、周りはお歯黒溝と呼ばれるお堀がめぐらされています。見世(みせ)にはたくさんの人の目があり、吉原はいわば大きな密室とも言える。そんな中から葛城はどうやって姿を消したのか? 答は途中から予想がつくもので、ミステリとして読むと物足りなく感じますが、終盤のするすると糸が解けるように事件の全貌が明らかになる感じがすごく気持ちよかったです。
最後に明かされる、葛城について聞き回っているの男の正体にもちょっとした驚きがあります。
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by MameBean | 2008-02-26 18:57 | 借りた本─ミステリ

七回死んだ男

七回死んだ男 (講談社文庫)
(西澤 保彦 / / 講談社)

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同じ日が9回も繰り返されるという特異体質を持った高校生キュータロー。『オリジナル周』では生きていた祖父が次の周では死んでいた。祖父の死は食い止められるのか‥‥。


時に探偵は事件が起こってからしか犯人を暴けないと揶揄されますが、この探偵役は事件を文字どおり食い止めようとします。なぜなら同じ日を9回繰り返す『反復落とし穴』にハマるという特異体質を持っていて、その落とし穴にハマった日に事件が起こるから。
こういう設定はタイムリープと言うんでしょうか。ドラマ『モップガール』や『時をかける少女』なんかもこういう設定でしたね。
タイムリープ作品はいくつかあるけど、繰り返す日を選べない、繰り返すのはきっかり1日、繰り返す回数は9回、現実となるのは最後の1周でそれまでの周は他の人の記憶には残らない、といった条件がきっちり設定されているので、SFだから何でもありといったことにはなりません。フェアにストーリーが進むのでSF本格ミステリと呼べる作品になっています。

特異体質を活かして、なんとか祖父の死を食い止めようとするのが孫のキュータロー。でも犯人と思われる人を監視したら別の人が犯人になって、その人を監視してもまた別の人が犯人になって、全員を監視したら‥‥という展開が待ち受けていて、ことごとくうまくいかない。9回繰り返されるのが、逆に9回しか試せないというリミットになってしまって、試せる残り回数が少なくなってくる焦りがうまれたりして展開をさらに面白くしています。

こういう特殊な設定だから、ストーリーは犯人や動機、トリックなどを当てるものではありません。どうすれば祖父は死なないのか、というのがメインで、そこに祖父の遺言を巡るゴタゴタが加わり、兄弟や親戚の別の顔を知ってしまったり。ひとりでいろいろと背負い込まなくてはいけないし、タイムリープするのも大変そうですね。

そしていよいよ迎える最終周。それで大団円を迎えるのかと思いきや、驚きの真相。ほのかな恋愛の要素も加わって、最後まで失速することなく楽しめました。
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by MameBean | 2008-02-05 17:01 | 借りた本─ミステリ
このミステリーがすごい! 2008年版
(宝島社)

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今年の流れとしては警察小説と本格モノらしいです。そういえば警察小説は横山秀夫以外読んだことないなー。
国内編の1位と2位は偶然にも、ともに親子3代に渡る物語です。上位作品はかなり長い作品が多いんですが、皆さん読んでるんですね。スゴい‥‥。女王国あたりでアップアップしてちゃダメですねー。

ランキングのなかで私が既読のものは3冊でした。あとは図書館で予約中だったり、借りようと思っていた本が4冊ほど。今年中に読みたいところですが、手元にまだ何冊か予約本があるので来年に持ち越しになりそう。

今年は全然海外ものに手を出していませんが(もともとそんなに読まないけど)、上位作品あたりは読んでみようかなという気になりました。読んでみたい作品があったけど、それを読むなら元ネタのあの人の作品を読んでおかなくちゃなー、とか考えると読むのはもうちょっと先になりそう。有名どころのミステリを読んでいないから、こんな時困る‥‥。
こういうランキングとあらすじを見てると、あれもこれもと読んでみたくなりますね。

今回でこのミスが始まって20周年ということで、感謝価格の500円となってます。『チーム・バチスタ』の田口先生の書き下ろし短編と、このミス受賞作が読めてワンコインとはかなりお買い得。


あ、うちの大学、ミステリ研あったんだ‥‥。
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by MameBean | 2007-12-14 18:40 | 図書館以外の本

タルト・タタンの夢

タルト・タタンの夢
(近藤 史恵 / / 東京創元社)

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自らのお店に〈悪くない〉と名付ける、ちょっと風変わりなシェフがいる、フレンチレストラン〈パ・マル〉。シェフはお客さんの話を聞くだけで、出来事の真相を看破してしまう‥‥。7つの連作短篇集。

本を読んでいると、その中に出てくる食べ物の印象が強く残ることが多いのは、私の食い意地が張っているからでしょうか。この前読んだ女王国の城でも、人類協会での食事にハムカツや目玉焼きが出てたことがなぜか記憶に残っています。アリバイとかはすぐに忘れるのになー。
食べ物、安楽椅子探偵、コージーミステリ、というキーワードがミミズクとオリーブに似た感じでもあります。ハイペースで長編を読んだ後なので、このほんわかした雰囲気に癒されました。

常連の西田さんはなぜ体調をくずしたのか? 甲子園をめざしていた高校野球部の不祥事の真相は? フランス人の恋人はなぜ最低のカスレをつくったのか?
血なまぐさい事件は起こらず、当事者でさえきっかけが思いつかないくらいささいな出来事。
これらの出来事の真相を看破する安楽椅子探偵はレストランのシェフなので、料理人ならではの知識と洞察力で真実にたどり着きます。そして料理人ならではのやり方で、お客を癒してあげたり、気づかせてあげたり。そんな時、きまってシェフがそっと差し出すのが、シェフ特製のスパイスを入れたホットワインであるヴァン・ショー。ヴァン・ショーってフランスの家庭では、風邪をひいていたり疲れている時によく飲まれているものなんだそう。シェフが伝えたのは、相手のことを思いやる気持ちなんじゃないかなー。

お客からの伝聞だけでレストランの中でのみ繰り広げられる物語なので、ともすると単調になりがちですが、料理の味や食感や香りのようにさまざまで奥行きがあります。タイトルに用いられている料理の他にもたくさんの料理が登場し、その料理の描写がまた秀逸なんですよ。食べたい‥‥。

「タルト・タタンの夢」
「ロニョン・ド・ヴォーの決意」
「ガレット・デ・ロワの秘密」
「オッソ・イラティをめぐる不和」」
「理不尽な酔っぱらい」
「ぬけがらのカスレ」
「割り切れないチョコレート」
目次には各話のタイトルがフランス語とともに並んでいて、まるでメニューのようなレイアウト。こういう遊び心、いいですね。各話が独立した短編集のようになっているので、コース料理のように順番に読んでもいいし、アラカルトのように好きな話から読んでもよさそう。読み終わると、極上のフレンチを食べたようでお腹いっぱいです。

めっきり冷え込んできた夜に、ヴァン・ショーでも飲みながら読みたい、そんな1冊。
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by MameBean | 2007-12-11 18:57 | 借りた本─ミステリ