第142回 芥川賞ノミネート作
久々の舞城氏。面白かったー。
バイオレンスも死体も魔人も出てこなくて、今までの舞城氏のような尖った感じはなくいちばん普通なんだけど。
それも家族の物語。
香織里自身も言っているけど、両親が不仲で‥なんてそんな珍しいことじゃない。
冷静に家族のこと自分のことを分析する香織里の視点がおもしろい。家族と言えども結局他人なんだと思いながらも、実はまだ消化しきれてない自分。だんだんおかしくなってきている自分を認識していて冷静だ‥‥。
これって私?って思っちゃったのが、本も漫画も結構読む香織里が漫画を描いてみようと思うけど、何も描くことが見つからなくて呆然とするところ。
香織里は両親のことでそれなりに辛い経験をしてきてて、きっと描けるだろうと思い込んでたのに何も描けなくて、自分には物語がないんだと気がつく。
私は香織里みたいな経験はしてないけど、それなりに漫画も本も好きで読むし、絵心もない方じゃない。昔むか〜しは漫画家に憧れた時期もありました。でも描けないんですよねー。読むのと描くのとは全く違ったものなんですよね。
そういう挫折も経験して香織里は成長し、両親のことを違った目で見られるようになったとき、自分の物語を得る。
最後に香織里が書いた小説。他人のお葬式に紛れ込む女の子の話。すごく面白くて、これだけで1冊分の本になるんじゃと思うほど。
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by MameBean
| 2010-03-31 19:39
| ─小説・エッセイ