図書館で借りた本の読書記録です 基本的にミステリ好き


by MameBean
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カテゴリ:    ─小説・エッセイ( 68 )

ひとりたび1年生

ひとりたび1年生
(たかぎ なおこ / / メディアファクトリー)

* * * * * * * *

150cmライフ。の著者がひとり旅に挑戦。
ひとりで行く、花巻温泉・長野善光寺・日光鬼怒川・鎌倉・三重・京都・博多・沖縄。

日帰りでひとり旅はしたことがあるけど、ひとりで泊まりは‥‥という私には『150cmライフ。』同様、共感できるポイントが多いです。

なかなかお店に入れなくてウロウロしたり、周りがグループやカップルだとちょっと寂しかったり。ひとり旅にちょっと腰が引けてしまうのは、こういう寂しさと、周りの人に寂しい人って思われてそうな気がしてしまうこと。こういうのが気にならないオトナになりたい‥‥。
昔わたしがひとりで行ったのは京都。どうしても坪庭が見たい!と思って行ったので、何かしら強い目的があればひとりでも平気なんだなー。「沖縄でスキューバダイビングのライセンスをとる」の回なんか、目的があって行っているところはすごく充実していて楽しそうです。スキューバは「空を飛んでいるみたい」なのだそう。へー、水嫌いだけどちょっとやってみたくなりました。

ちょっと変わったとこだと「宿坊」や「自炊のできる湯治宿」に泊まっています。お寺に泊まる「宿坊」は知ってたけど、「自炊のできる湯治宿」って面白そうですごく興味がわきました。基本料金があってコタツ100円、布団210円とかで、料金が加算されていくんですよ。でも激安。

同じひとり旅らしき人に声をかけて手伝ってあげたり、ひとりで屋台に入ったり、
だんだんレベルアップ(?)していて、がんばれーって応援したくなります。
でも今後回を重ねるごとに、ひとり旅上手になってしまったら寂しいなーとも思います。たかぎさんはトホホな話が面白いので。でも何でもないちょっとした出来事でもクスッと笑ってしまうように描く方なので杞憂でしょうが。第2弾も出ているので、そちらはどうなっているのか気になります。

150cmライフ。では奥付に編集者の身長が書いてあったけど、今回はひとり旅経験値が書いてあります。むむっ、皆さん意外としてますねー。
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by MameBean | 2008-01-11 20:19 | ─小説・エッセイ

150cmライフ。〈2〉

150cmライフ。〈2〉
(たかぎ なおこ / / メディアファクトリー)

* * * * * * * *

身長150cmの日常生活を描いたイラストエッセイ『150cmライフ。』の続編。

私の身長は150cmではないけど、平均身長より低いので「あー、わかるわかる」な話がいっぱい。家に踏み台代わりの椅子とかありますから(台所の吊り戸棚や押し入れにモノを出し入れする時に必須)。
身長が低いゆえのバスや電車、歯医者でのトホホな話、つい背伸びをしてしまう状況、背の高い友人との行動で気づいたこと。背が低いから損をした、背が低いのがコンプレックスだ、というようなネガティブな描き方ではなくて、背が低い人はこんな風にものを見ているというのを面白く紹介しています。

マルイのWEBで連載されていたそうなので、洋服のお直しやヘアメイクとか、プロに聞いたお役立ち情報も掲載されていて、前作より実用的な内容になっています。

私は本を読む時、奥付(本の最後の、著者名とか発行日を記した部分)とか装丁、装画が誰なのかを見るクセがありますが、この本の奥付には編集スタッフの名前の後ろにかっこ書きで身長が書いてあります。最後の最後までこの本の企画を貫いていますねー。こういうのに気がつくとちょっとうれしい。
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by MameBean | 2008-01-10 17:59 | ─小説・エッセイ

風が強く吹いている

風が強く吹いている
(三浦 しをん / / 新潮社)

* * * * * * * *

寛政大学四年の灰二(ハイジ)と新入生の走(カケル)が出逢い、竹青荘の10人目の住人となったとき、箱根駅伝への壮大な挑戦が始まった‥‥。

野球は9人、サッカーは11人、ガバディは7人‥‥10人でやるスポーツと聞いて箱根駅伝を思い浮かべる人は少ないはず。9部屋しかないアオタケの住人が10人(あ、ダジャレではなくて)になる、ハイジにとってはそれは偶然で済ませられる出来事ではなかった。しかも10人目は陸上経験者のカケル。

読む前は、三浦しをんさん読むの初めてだし、「箱根駅伝がテーマの小説」ということは、おナミダ頂戴的な青春小説なんだろうなと思ってました。でも読み始めると想像を絶するオンボロなアパートで起きるドタバタ劇といった風で、しかも陸上とは縁遠い住人たちばかり。これは思っていた小説とは違うかも‥‥と思い始めていたころ、皆がぶつかり合い、他校の生徒とのいざこざありでどんどん盛り上がってきました。で、前半のドタバタで油断していたため、不覚にも目に涙があふれてしまった。電車の中なのに‥‥。

走るって何も道具を使わず自分の体ひとつだけで、駆け引きなんかはあるものの最後は自分との戦い。原始的で孤独なスポーツである駅伝に集中している皆がまぶしい。葉菜ちゃんが胸がつまって声が出なかった気持ち、すごく分かるなー。駅伝を馬鹿にしたような発言にムカーッときて反論したくなったりもしました。この本読む前までは私も走るってことを分かってなかった側だったのに。それがいつの間にか自分も竹青荘の住人ひとりになったかのように、ともに走っている気持ちになって読んでいました。

住人が10人もいるから(あ、また‥‥)、前半はユキ、神童、キング、ニコチャンあたりのキャラクタがまだちょっと掴めていなくて、ごっちゃになったりもしましたが、各人がそれぞれ自分自身と向き合う時が来た時、それまでどういう思いを抱えていたのかが判明します。単純で分かりやすい人たちだと思っていたのに、他人をうらやましく思ったり自分が嫌いだったりという気持ちを抱えていたりするんですね。それらをすべて理解し、かつそれを相手に気づかせないように手綱をとっているハイジってすごい‥‥。

表紙が平安の絵巻物語り風のイラストになっていて、見覚えのあるシーン、台詞が描かれています。これ見ているだけでも、あのシーンやこのシーンが走馬灯のようによみがえってきて、再びジーンときちゃいます。
王子が走った1区、2区のムサ、3区のジョータ、4区ジョージ、5区神童、6区ユキ、7区ニコチャン、8区キング、9区カケル、10区ハイジ。それぞれが走ったかと思うと、来年の箱根駅伝が楽しみになってきました。

 いいか、過去や評判が走るんじゃない。
 いまのきみ自身が走るんだ。惑わされるな。振り向くな。
 もっと強くなれ。
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by MameBean | 2007-12-25 01:28 |     ─小説・エッセイ

図書館戦争

図書館戦争
(有川 浩 / / メディアワークス)

* * * * * * * *

2019年、公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる法律として『メディア良化法』が成立・施行された。それに対抗するため、図書館は自衛隊並みの防衛隊を組織するようになる。

 一、図書館は資料収集の自由を有する。
 二、図書館は資料提供の自由を有する。
 三、図書館は利用者の秘密を守る。
 四、図書館はすべての不当な検閲に反対する。
 図書館の自由が侵される時、我々は団結して、あくまで自由を守る。

いま、私はこうやってあたり前のように図書館の本を読んでいるわけだけど、この本の中の世界では本を守るために図書隊が日々訓練と警備に励んでいるんですね。本が高価なものになっているとはいえ、思いっきり体育会系な堂上でさえ本を扱う時には気を使っているのには好感が持てます。

○○法とか○○委員会とか、漢字が多くてなかなか読み進められないところもあったりしますが、図書隊、良化委員会、警察の関係と図書隊の編成がだいたい分かっていれば大丈夫。だって書かれていること全てを理解するのは無理〜。最後まで読めばだいぶ飲み込めてきますが、読んでいる途中だと難しい。
でもあとがきによると、コンセプトは月9連ドラ風なんだそう。連ドラなので当然ラブ。要はラブコメなんですよ。しかもツンデレ〜(誰とは言いませんが)。

身悶えするほど恥ずかしくなる展開(郁が言うところの『痒い』)とかあるから、少女漫画とか受け付けない人にはどうだろ〜。読めないかも。まぁ私はラブコメ好きなので、そういうのも含めて楽しめました。

連ドラ風というだけあって、各キャラがしっかり立っています。
頭より体が先に動く、山猿・郁。郁とことごとく衝突する上官・堂上。
笑い上戸で、言うことは正論な小牧に、エリート中のエリート・手塚。
喧嘩屋中年・玄田に、すべての情報を掌握している・柴崎。
堂上vs玄田のバトルが好きですね。あぁかわいそう堂上教官、上司にも部下にも問題児がいるなんて。


著者はヤフーのインタビューによると、彼らは行政戦隊図書レンジャー!みたいなイメージで、それぞれの色も考えていたんだそう。
ちなみに郁がレッド、堂上=ブルー、小牧=グリーン、柴崎=ピンク、消去法でイエローは手塚。イエローと言えばカレー好きだったり、三枚目が多いから相当不本意でしょうねー、手塚。玄田隊長は総司令だそう。私としては折口さんも入れてほしかったな〜。でももう役がないか‥‥。

全部読み終わってから表紙カバーのイラストを見てみると、物語のなかに出てくるモチーフがいろいろ散りばめられていて楽しい。王子様のことを考えて花占いをしている女性は間違いなく郁だろう。饅頭(タクスフォース饅頭?)とか熊とかモンブランもひっそりと描かれていて、思わずニヤリとしてしまいます。
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by MameBean | 2007-11-21 17:38 | ─小説・エッセイ

夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女
(森見 登美彦 / / 角川書店)

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クラブの後輩に一目惚れしてしまった「私」。
彼女のハートを射止めるべく、常に彼女の視界に入ることを心がけてきた。
第20回山本周五郎賞 受賞。

なるべく彼女の目にとまる作戦、名付けて「ナカメ作戦」。

偽電気ブラン、閨房調査団、韋駄天コタツ、パン食連合ビスコ派、偏屈王、プリンセス・ダルマ‥‥
読んでいない方にとっては何のこっちゃという感じですが、これはうまく説明できないんですね。もう読んでもらうしかない、としか言えません。ちなみに私もビスコ派です。小麦胚芽入り。

外堀から本丸こと意中の後輩へと攻めていこうとする先輩に対して、どこからともなく突然現れて恋路を邪魔するのが、これまた摩訶不思議な人たち。
いつも浴衣を着てて自らを天狗と名のり空中浮遊する樋口さん。宴会に紛れ込んでタダ酒を飲むのを得意とし、酔うと人の顔を舐めまくる羽貫さん。大富豪で屋上に竹林と池のある自家用三階建て電車に乗っている李白翁。
樋口さんと羽貫さんは『四畳半神話大系』に登場するそうですね。そっちから読めばよかったかな。

他にもパンツ番長や事務局長とか象のお尻の人とか、書ききれないくらいのたくさんの人が登場します。脇役が強烈な個性を放っているから、黒髪の乙女はヒロインに決まっているのに、先輩はいつまでたってもヒーローにはなれず路傍の石ころに甘んじるしかない。でも先輩には申し訳ないけど、特にたくさんの人が入り乱れてカオスと化す学園祭の話がいちばんオモチロイ。その次の冬の話で怒濤の出来事も終焉を迎え、しみじみと人恋しくなります。

意中の彼女にも『運命』を感じてもらいたいのに、いつまでたっても『あ!先輩、奇遇ですねえ!』としか言われず、眼中になさそう。天然だな〜、彼女。先輩と黒髪の乙女の交互の視点で書かれるので、乙女の気づいてなさっぷりに少々先輩がかわいそうになります。ほんと、ニアミスなんですよ。春の夜の先斗町で、夏の古本市で、秋の学園祭で。いつも同じ場所ですれ違いつづけ、最後の最後に念願の偶然の出会いができるんだけど、詭弁踊りだの火鍋だので混乱して、台詞が出てこず逃げるようにその場を去るしかない。まぁこんなもんですよね、現実は。

でも、これからお願いごとをする時に唱える呪文は決まりました。
なむなむ!


 偶然のすれ違いになるか、それとも運命の出逢いになるか、
 すべては己にかかっている。
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by MameBean | 2007-10-24 17:29 | ─小説・エッセイ
男子のための人生のルール
(玉袋 筋太郎 / / 理論社)

* * * * * * * *

自身も中学生男子の親である著者の、初の書き下ろし単行本。
漢・玉袋筋太郎が満を持しておくる子どもたちへのメッセージ。

理論社から出版されているよりみちパン!セというヤングアダルト向けの新書。
“学校でも家庭でも学べない「いま」を生きていくためのたいせつな知恵のかずかずについて、刺激的な書き手たちが、中学生以上すべての人に向けて、読みやすくコンパクトなかたちで書き下ろします”というコンセプトだそう。
この他にも、なかなか面白そうなタイトルが控えてます。

浅草キッドの水道橋博士はたくさん本を執筆しているで、書き物は博士の担当だと思っていました。しかしどうして、玉ちゃんもいい文章を書くではないか。
一見おちゃらけた人のようだけど、人間としての基本ができている人なんだと、180度見方が変わりました。昔は、親はもとより銭湯にいる人近所の人、周りの人が全て教えてくれたんだそう。今の子たちは教えられていないから分かるわけがない、と。人生の先輩なんて上から目線じゃなく、ちょっとばかり人生を長くやっている『中学27年生』としての伝えたいことが書かれている。

男子のための人生のルールなんてタイトルになっていますが、ここに書かれているのは挨拶をするとか我慢をするとかコンプレックスに向き合うとか、けっして特別なことじゃない。
でも挨拶すると気分がいいからしようなんて理想論を持ち出すのではなく、お互いに嫌な気持ちにならないため・相手の迷惑に気づかないのは恥ずかしいこと、ってちゃんと納得できる説明がされている。しかも中学27年生としてのアドバイスだからすんなり受け入れられる。男子でもなく、中学生でもない私のこころにもスーっと入ってきました。

中学生よ、銭湯に行け‥‥!

話が昔の思い出話になったりしたとき、何回かウルッと目頭があつーくなりました。いいな〜、楽しそうな時代だったんだな。

本を開くと、黒とサイケな赤の2色で、タイトルがすごく大きかったり、落書き風のイラスト(100%ORANGE)があったりと、造本が面白いことになってます。(電車ではちょっと読みづらい時も(笑))この装丁はあの人だろうと思って、捜してみると‥‥やはり祖父江慎。装丁で“おっ!”と思うものって必ず祖父江さんなんですよね。
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by MameBean | 2007-09-26 17:26 | ─小説・エッセイ

鹿男あをによし

鹿男あをによし
(万城目 学 / / 幻冬舎)

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大学の教授の勧めで、期限付きで奈良の女子高の先生をすることになった「おれ」。
慣れない土地、うまくいかない授業で悩んでいるとき、人間の言葉をしゃべる鹿が現れた‥‥。

『20年後』『しゃばけ』、そしてこの『鹿男——』と、面白い本に連続で当たったので、俄然読書が楽しいです。そろそろ読書の秋ですしね。

 大阪の食い倒れ、京都の着倒れ、奈良の寝倒れ

昔、鹿は「神鹿(しんろく)」と呼ばれ、鹿を殺した人間は死罪だった。朝起きて家の前で鹿が死んでいたら大騒ぎで、隣の家の前に死骸を移動しちゃうなんてことも。遅くまで寝ていると、他人からのとばっちりを受けることになる‥‥それを『奈良の寝倒れ』と言うそう。

そんな鹿も、現代ではただの動物という扱いである。奈良公園にいけばわんさかいる。しかし、この鹿がしゃべるのである。しかも人類を危機から救うための役割を人間に命ずるのである。

荒唐無稽な設定だな‥‥と思って読み進めていたけど、1800年前にまで時代が遡り、鹿島大明神やらなまずやら富士山噴火やらいろんな符牒が繋がっていく。神無月という言葉の意味、十二支に狐と鹿がいない理由、日本の歴史や文化についても話に面白く絡めていて、それも楽しく、かつためになります。
あと、途中の青春スポーツ小説風(?)な剣道の試合シーンにはドキドキしてしまった。しかも試合が終わってクライマックスを迎えるのかと思ったらそうじゃなく、それからも波乱があってまだまだ楽しめました。

誰が狐の使いなのか、誰が鼠の使いなのか、それを推理するというミステリ的な楽しみもある。う〜ん、まさか彼女がそう絡んでくるとは‥‥。うん、でもいろいろとすっきりつながった感じがする。ラストがちょっと無理矢理な感じがあるけどね〜

キョンキョンが『ポッキーを‥‥』と言っていたのはコレだな、と分かってうれしい。

 人間という生き物は文字にして残さないと、何もかも忘れてしまう。
 本当に大事なことは、文字にしてはいけない。
 言葉とは魂だからだ。
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by MameBean | 2007-09-19 01:18 | ─小説・エッセイ

しゃばけ

しゃばけ (新潮文庫)
(畠中 恵 / / 新潮社)

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江戸の大店の若だんな一太郎は、生まれながらの虚弱体質ですぐ寝込んでしまうため、妖(あやかし)たちがいつも守っている。ある夜、一太郎は人殺しを目撃してしまう。そしてその殺人は江戸中で巻き起こってしまう‥‥。
13回 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。

今秋、フジテレビ系でドラマ化されるんですね。あ〜このシリーズ、なんでもっと早くに読まなかったんだろ〜。しゃばけの世界にどっぷり引き込まれました。


ほのぼの(?)とした日常風景のなか巻き起こる、連続殺人事件。その謎を解明しようと乗りかかる若だんなだが、周りの反対がすごい。手代2人と家族たちの過保護っぷりは『大福餅の上に砂糖をてんこ盛りにして、その上から黒蜜をかけたみたいだ』と言われるほど。でも、意外や意外と芯が強く頑固な若だんなはここぞという時は腹をくくる。若だんなは甘やかされて育ったのに、しっかりした人間になったんですね。
事件の解決とともに、どうして若旦那は妖(あやかし)を見れるのか、どうして妖に守られてきたのか‥‥という謎も明らかに。ほんとに皆に望まれて産まれてきたのだとじーんときました。
それにしても妖の見える日常は楽しそうだな〜 私も鳴家や屏風のぞきと一緒にお八つが食べたい‥‥。

しかしこの時代(江戸時代)って格差社会だな〜と思う。
職業が産まれながらに決まり、貧富の差も決まっててしまうんだから。
廻船問屋問屋のひとり息子にうまれた若だんなは家業を継ぐし、お隣の菓子屋の栄吉は菓子職人にならなくてはならない。若だんなは実質的な仕事は手代がやってくれるけど、栄吉はお菓子が作れなくてはならない。なのに栄吉の作るあんは不味いときた‥‥。才能とか好きとかじゃなく、うまれた時から就く職業が決まっているってどんな感じなんだろう。栄吉の妹のお春ちゃんの恋心だって、身分が違いすぎるから前途多難だし。
今回の事件にも、その職業による格差と子を思う親心が絡んでくる。

 しゃばけ
 現世に執着する心。また、俗世間の利益・名誉にとらわれる心。
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by MameBean | 2007-09-13 17:59 |     ─小説・エッセイ

20年後

20年後 (オー・ヘンリーショートストーリーセレクション 1)
(オー・ヘンリー / / 理論社)

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「20年後の同じ日、同じ時間にここで会おう……」という親友と交わした約束を果たしにやってきた男。はたして親友は現れるのか? (表題作)
9つの短編を収録したショートストーリー集。


一番最初に掲載されている表題作からしてノックアウト。もう一話もう一話‥‥と思っている間に一気に全部読み切ってしまいました。
こんなに短い話でもきちんとオチがあって、しかも単なる大どんでん返しではなく哀愁のある読後感。
9編のどの作品もが、オチ+(プラス)何かある読後感。それはユーモアだったり温かさだったり愛情だったり。
表題作の他に気に入ったのが、元・金庫破り名人の話『改心』。粋な終わり方がよかったなー。
『オデュッセウスと犬男』のピリリと効いたブラックユーモアも‥‥、『バラの暗号』のちょっと笑っちゃう結末も‥‥、などと印象に残る粒よりの作品ばかり。

オー・ヘンリーという人は19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ニューヨークの人々の生活を描いた作品を多く発表していたようです。その時代の日本と言えば、江戸〜明治のころで、そんな時代にニューヨークに住むふつうの人々の生活をこれだけ活き活きと描いていたというのは驚き。
しかも古くささは全く感じさせないんです。私は何も知らずに読んだので、まぁ40〜50年前くらいに書かれたものだと思ってました。

プロフィールによるとこの人、勤めていた銀行の横領の容疑で逮捕され、服役期間中に小説を執筆していたそう。この短編集には、機転が利いて粋な計らいをする警察官が多く登場しているので、ちょっと意外な感じがします。

そしてオー・ヘンリーって知らない作家だと思っていましたが、私も知っていて、そして誰もが知っている有名な作品を書いている人でした。病室の窓からみえる樹の葉がすべて落ちたら自分の命も尽きると信じ込んでしまう少女の話『最後の一葉』、貧しい夫婦がお互いに贈るクリスマスプレゼントを工面する話『賢者の贈り物』。こういった皮肉なんだけど温かさがあるオチがこの人の真骨頂なんだろうな。他の作品ももっとたくさん読んでみたくなりました。
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by MameBean | 2007-09-11 19:16 |     ─小説・エッセイ

ニッポニアニッポン

ニッポニアニッポン (新潮文庫)
(阿部 和重 / / 新潮社)

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鴇谷(とうや)春生は、自分の名前にある「鴇」の文字がトキを意味すると知り、異常な興味を持つ。そしてトキの解放または殺害を試みるために、ネットで大量の情報を入手する。


ニッポニア・ニッポン - 国の特別天然記念物であるトキの学名。
日本に多く存在したトキは乱獲によって数が減ったため、国によって保護・人工飼育されたが繁殖に失敗し、日本産トキは2003年に絶滅。しかし、ニッポニア・ニッポンという学名ゆえに、環境庁が日本国内での種の保存にこだわり、周囲から隔離・監視されている‥‥。

人間が巣の上空にヘリコプターを飛ばしたため、トキが巣を放棄してしまった‥‥なんて出来事が実際にあったんですね。人間が関心を持てば持つほど、どんどん絶滅へのスピードを加速する結果となったトキ。でも未だにトキへの関心はつきないんですね。

主人公・春生はトキの境遇に自分自身を重ねた。
中高生の頃思い描いた(もしくは刷り込まれた)将来設計が、ひとつ崩れるとすべてがダメになってしまったように感じる。で、同じ境遇であるかと思い込んでいたトキに裏切られたと感じた時、春生の思いは爆発する。
この自分自身の親子関係や恋愛などの問題を、国家思想的な問題にすり替えてしまうのが、ブラックユーモアのようで面白い。引きこもりなのに、武装決起のために自動車の教習所に通ったりランニングして体力づくりをしたり‥‥って、ここも突っ込んでいいんですよね?

ただ、武装決起するまでが長くて、しかもネットのニュースや論文からの引用部分が多いのがもどかしい。主人公がネットから情報を得ていたゆえなんだろうけど、情報を羅列されても私には消化しきれないのですよ。

しかし、佐渡で出会った少女との交流で、何か変化が起きそうな予感を漂わせつつのこのラストは面白いなー。


 昨夕から薄々気づきかけていたことを明確に悟った 
 —運命とは、全く無意味なものだと。
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by MameBean | 2007-09-06 17:45 |     ─小説・エッセイ