図書館で借りた本の読書記録です 基本的にミステリ好き


by MameBean
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風が強く吹いている

風が強く吹いている
(三浦 しをん / / 新潮社)

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寛政大学四年の灰二(ハイジ)と新入生の走(カケル)が出逢い、竹青荘の10人目の住人となったとき、箱根駅伝への壮大な挑戦が始まった‥‥。

野球は9人、サッカーは11人、ガバディは7人‥‥10人でやるスポーツと聞いて箱根駅伝を思い浮かべる人は少ないはず。9部屋しかないアオタケの住人が10人(あ、ダジャレではなくて)になる、ハイジにとってはそれは偶然で済ませられる出来事ではなかった。しかも10人目は陸上経験者のカケル。

読む前は、三浦しをんさん読むの初めてだし、「箱根駅伝がテーマの小説」ということは、おナミダ頂戴的な青春小説なんだろうなと思ってました。でも読み始めると想像を絶するオンボロなアパートで起きるドタバタ劇といった風で、しかも陸上とは縁遠い住人たちばかり。これは思っていた小説とは違うかも‥‥と思い始めていたころ、皆がぶつかり合い、他校の生徒とのいざこざありでどんどん盛り上がってきました。で、前半のドタバタで油断していたため、不覚にも目に涙があふれてしまった。電車の中なのに‥‥。

走るって何も道具を使わず自分の体ひとつだけで、駆け引きなんかはあるものの最後は自分との戦い。原始的で孤独なスポーツである駅伝に集中している皆がまぶしい。葉菜ちゃんが胸がつまって声が出なかった気持ち、すごく分かるなー。駅伝を馬鹿にしたような発言にムカーッときて反論したくなったりもしました。この本読む前までは私も走るってことを分かってなかった側だったのに。それがいつの間にか自分も竹青荘の住人ひとりになったかのように、ともに走っている気持ちになって読んでいました。

住人が10人もいるから(あ、また‥‥)、前半はユキ、神童、キング、ニコチャンあたりのキャラクタがまだちょっと掴めていなくて、ごっちゃになったりもしましたが、各人がそれぞれ自分自身と向き合う時が来た時、それまでどういう思いを抱えていたのかが判明します。単純で分かりやすい人たちだと思っていたのに、他人をうらやましく思ったり自分が嫌いだったりという気持ちを抱えていたりするんですね。それらをすべて理解し、かつそれを相手に気づかせないように手綱をとっているハイジってすごい‥‥。

表紙が平安の絵巻物語り風のイラストになっていて、見覚えのあるシーン、台詞が描かれています。これ見ているだけでも、あのシーンやこのシーンが走馬灯のようによみがえってきて、再びジーンときちゃいます。
王子が走った1区、2区のムサ、3区のジョータ、4区ジョージ、5区神童、6区ユキ、7区ニコチャン、8区キング、9区カケル、10区ハイジ。それぞれが走ったかと思うと、来年の箱根駅伝が楽しみになってきました。

 いいか、過去や評判が走るんじゃない。
 いまのきみ自身が走るんだ。惑わされるな。振り向くな。
 もっと強くなれ。
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by MameBean | 2007-12-25 01:28 |     ─小説・エッセイ