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図書館で借りた本の読書記録です 基本的にミステリ好き


by MameBean
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20年後

20年後 (オー・ヘンリーショートストーリーセレクション 1)
(オー・ヘンリー / / 理論社)

* * * * * * * *

「20年後の同じ日、同じ時間にここで会おう……」という親友と交わした約束を果たしにやってきた男。はたして親友は現れるのか? (表題作)
9つの短編を収録したショートストーリー集。


一番最初に掲載されている表題作からしてノックアウト。もう一話もう一話‥‥と思っている間に一気に全部読み切ってしまいました。
こんなに短い話でもきちんとオチがあって、しかも単なる大どんでん返しではなく哀愁のある読後感。
9編のどの作品もが、オチ+(プラス)何かある読後感。それはユーモアだったり温かさだったり愛情だったり。
表題作の他に気に入ったのが、元・金庫破り名人の話『改心』。粋な終わり方がよかったなー。
『オデュッセウスと犬男』のピリリと効いたブラックユーモアも‥‥、『バラの暗号』のちょっと笑っちゃう結末も‥‥、などと印象に残る粒よりの作品ばかり。

オー・ヘンリーという人は19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ニューヨークの人々の生活を描いた作品を多く発表していたようです。その時代の日本と言えば、江戸〜明治のころで、そんな時代にニューヨークに住むふつうの人々の生活をこれだけ活き活きと描いていたというのは驚き。
しかも古くささは全く感じさせないんです。私は何も知らずに読んだので、まぁ40〜50年前くらいに書かれたものだと思ってました。

プロフィールによるとこの人、勤めていた銀行の横領の容疑で逮捕され、服役期間中に小説を執筆していたそう。この短編集には、機転が利いて粋な計らいをする警察官が多く登場しているので、ちょっと意外な感じがします。

そしてオー・ヘンリーって知らない作家だと思っていましたが、私も知っていて、そして誰もが知っている有名な作品を書いている人でした。病室の窓からみえる樹の葉がすべて落ちたら自分の命も尽きると信じ込んでしまう少女の話『最後の一葉』、貧しい夫婦がお互いに贈るクリスマスプレゼントを工面する話『賢者の贈り物』。こういった皮肉なんだけど温かさがあるオチがこの人の真骨頂なんだろうな。他の作品ももっとたくさん読んでみたくなりました。
by MameBean | 2007-09-11 19:16 |     ─小説・エッセイ