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図書館で借りた本の読書記録です 基本的にミステリ好き


by MameBean
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ドッペルゲンガー宮

ドッペルゲンガー宮―あかずの『扉』研究会流氷館へ
(霧舎 巧 / / 講談社)

* * * * * * * *

岬の突端に立つゴシック建築の建物『流氷館』。
その館に招かれた客が10人集まったとき、惨劇の幕が開いた‥‥。

第12回メフィスト賞受賞作。
こちらにも書いたように、年間目標のメフィスト賞。


本を開いたときに最初に目につく「著者のことば」に書かれているのが
『本格推理小説ファンの皆さんに読んでもらえるミステリを書いたつもりです』という一文。
確かに、これは本格ミステリ好きな読者を想定して書かれています。

探偵役の後動さんに記述者のカケル。ふたりは単なる『ホームズとワトソン』という役割分担ではないみたい。それはカケルがミステリマニアだから。ミステリで用いられる数々のネタや設定が盛り込まれつつ、それが後動さんによって否定される。あ〜、そうなの?と思いつつも、そんな事言ってもいいものかとちょっと心配になったり。
カケルが言わばミステリ好きであろう読者の代弁者でもある。
それにカケルはワトソン役にするにはかなりタナボタでおいしい役だし。


後半、謎解きがもどかしいような、ちょっと冗長に感じるんだけど、たぶんそれは仕掛けなんだろう。
造本トリックという。
本格ミステリでありながらアンチ本格のような‥‥。
物語の中では、殺人事件の起こったことは現実なのに、「地の文に嘘は書いてはいけない」だとか「ルール違反」だとか。ミステリでありながら登場人物たちが「これはミステリではない!」と声を上げていて、だんだんどちらが現実でどちらが小説なのか、自分は読者なのか物語の登場人物なのか、分からなくなる。その複雑な構成にはただただ驚くばかり。

作中作でアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』を用いているので、読んでいない人は注意が必要かも。まぁこの本を読む人で『そして誰もいなくなった』を読んでいない人はいないでしょうが‥‥。

開かずの扉。
簡単に開ける事ができるけど、決して開けてはいけない扉。
それは‥‥人を殺すということ。
by MameBean | 2007-03-08 10:35 | 借りた本─ミステリ