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図書館で借りた本の読書記録です 基本的にミステリ好き


by MameBean
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検死審問―インクエスト

検死審問―インクエスト (創元推理文庫)

パーシヴァル ワイルド / 東京創元社


リー・スローカムが検死官としてはじめて担当することになったのは、女流作家ミセス・ベネットの屋敷で起きた死亡事件。ベネットの誕生日を祝うために出版関係社や親族らが集まっていた中、事件が起きる。

「江戸川乱歩やチャンドラーを魅了した」という触れ込みにひかれて読みました。

この「検死審問」というのが馴染みのないシステムで、最初は戸惑いました。
推理創元社のHPによると
『変死体が出たときにその死因を究明するため、検死官と、一般人から選ばれた検死陪審員が集まって関係者の証言を聞き、「他殺」「自殺」「死因不明」などの評決を下す制度のこと。その後の捜査はここで下された評決に沿っておこなわれます』
とのこと。

検死官の役割はドラマ「臨場」で観たようなものとは異なり、陪審員の意見を聞いたり、検死審問に証人を呼んだりと裁判官に近いもの。検死官に法医学的な知識はなく、状況や証言だけで死因を判断するんですね。裁判ものと思って読み進めていくと、すんなり理解できます。

女流作家の屋敷で起きた事件が、複数の証人の証言や手記によって語られます。著者が元々劇作家だそうで、戯曲風に書かれています。
だからなのか、人により語り口が違っていて面白い。声が小さくて言っていることが聞き取りにくい執事とか、質問には答えない女流作家とか。
これらの証言で少しずつ明らかになる事件の全貌は、最後で二転三転し意外な結末を迎えます。
手がかりはすべて読者にさらけ出されているので、フェアな謎解きが楽しめます。
70年も前に書かれたものでユーモアと本格ミステリを融合させているのには驚きました。
by MameBean | 2009-08-21 17:58 | 借りた本─ミステリ