検死審問―インクエスト
2009年 08月 21日
「江戸川乱歩やチャンドラーを魅了した」という触れ込みにひかれて読みました。
この「検死審問」というのが馴染みのないシステムで、最初は戸惑いました。
推理創元社のHPによると
『変死体が出たときにその死因を究明するため、検死官と、一般人から選ばれた検死陪審員が集まって関係者の証言を聞き、「他殺」「自殺」「死因不明」などの評決を下す制度のこと。その後の捜査はここで下された評決に沿っておこなわれます』
とのこと。
検死官の役割はドラマ「臨場」で観たようなものとは異なり、陪審員の意見を聞いたり、検死審問に証人を呼んだりと裁判官に近いもの。検死官に法医学的な知識はなく、状況や証言だけで死因を判断するんですね。裁判ものと思って読み進めていくと、すんなり理解できます。
女流作家の屋敷で起きた事件が、複数の証人の証言や手記によって語られます。著者が元々劇作家だそうで、戯曲風に書かれています。
だからなのか、人により語り口が違っていて面白い。声が小さくて言っていることが聞き取りにくい執事とか、質問には答えない女流作家とか。
これらの証言で少しずつ明らかになる事件の全貌は、最後で二転三転し意外な結末を迎えます。
手がかりはすべて読者にさらけ出されているので、フェアな謎解きが楽しめます。
70年も前に書かれたものでユーモアと本格ミステリを融合させているのには驚きました。
by MameBean
| 2009-08-21 17:58
| 借りた本─ミステリ